比較臨床心理学(Comparative Clinical Psychology)とは、異なる文化的・社会的・歴史的文脈における臨床心理学の理論的枠組み、実践的手法、専門職制度および倫理的基盤を比較検討し、心理支援の普遍性と文化的多様性を明らかにすることを目的とする学際的研究領域である。
本領域は、個人の心理的苦悩や回復過程が文化的・制度的文脈といかに相互作用するかに着目し、各国の臨床的実践の分析を通して、文化横断的な臨床理論の再構築と、多文化社会における実践的介入モデルの開発を志向する。加えて、異文化間における心理援助の倫理、トレーニング、専門性の在り方に関する批判的検討を含み、臨床心理学の国際的発展に資することを目指す。
【定義の解説】
比較臨床心理学は、単に各国の臨床心理学の紹介や翻訳を行うだけの領域ではありません。異なる文化圏における「心理的問題のとらえ方」「援助の枠組み」「治療者-クライエント関係」「専門職の養成や制度化の方法」など、臨床心理学を構成するあらゆる要素を比較し、その中にある文化的制約・普遍的構造・制度的特徴を浮かび上がらせます。
このような比較を通して、各国・各文化の文脈に適合した臨床的支援モデルの発展に寄与すると同時に、既存の臨床心理学理論に対する批判的再考や再構築を促進します。特に近年は、「多文化臨床」「文化的コンピテンス」「脱植民地主義的心理学」との連携も重視されています。
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【比較臨床心理学における主要な研究テーマ例】
1. 臨床心理士や心理カウンセラーの養成・認定制度の国際比較
例:日本、アメリカ、中国、フランスにおける専門職養成制度と職能規範の比較。
2. 心理療法の適用と文化的調整(Cultural adaptation of psychotherapy)
例:CBTや動作法などの心理療法が異文化においてどのように翻訳・適応されているか。
3. 文化による心理的苦悩の表現形式と診断分類の相違
例:うつ病、トラウマ、不安症が文化ごとにどのように訴えられ、理解されるか。
4. 心理的援助における価値観・倫理の比較
例:家族への配慮、個人主義/集団主義の違い、守秘義務と報告義務の文化的揺れ。
5. 臨床面接におけるコミュニケーション様式の文化的違い
例:沈黙、視線、自己開示の文化的意味と、臨床場面での実際的対応。
6. 移民・留学生・国際結婚など、越境的状況にある個人への心理支援
例:多言語面接、通訳介入、文化移行期のメンタルヘルス支援
7. ポストコロニアル視点からの臨床心理学批判と再構築
例:西洋中心の理論・技法の移植がもたらす問題と、ローカル知の再評価。
・本研究会では、下記のような関心・専門を持つ方々のご参加を歓迎します:
・多文化適応・異文化間心理学に関心のある臨床心理士・公認心理師
・留学生・外国籍住民などへの心理支援に関わる教育・福祉・医療分野の実践者
・海外での臨床・調査経験を持つ研究者
・比較文化・文化心理学を専門とする学術関係者など
⭐️入会方法:
下記「お問い合わせ」フォームより、簡単な自己紹介と参加動機をお送りください。事務局にて確認後、折り返しご連絡を差し上げます。
入会金:¥5,000円(当面)
年会費:¥3,000円(当面)
代表: 望月 宇(博士・心理学・九州大学大学院)
mochizuki6869@gmail.com